本の値引きとポイントサービスについて

本の値引きとポイントサービスについて

no titleという記事がITmediaに出ていて、内容が中途半端でブコメも混乱しているので整理してみる。

再販制

まず「再販制」についても用語を誤解している人が時々いるんだけど、メーカーが小売店に対して小売価格を強制する「再販売価格維持行為」は、独占禁止法違反となる。それが「適用除外」として違法じゃなくなる品目が公正取引委員会によって指定されていて、出版物が含まれるのである。

そのため出版社-取次-書店の間で「再販売価格維持契約」が結ばれて価格拘束が行われている。法律による強制ではなく、任意の契約だ。

大学生協

大学生協の値引きについてブコメで言及している人もいるが、

また、共済組合生活協同組合独禁法第23条5項の規定により再販契約を遵守する義務を負わない。そのため、大学生協などでは再販商品であっても値引きが行われている。no title

つまり「再販売価格維持契約」を生協は結んでいない、あるいは無効となる。*1 *2

Amazonの場合

で、まぁアマゾン生協じゃないよね。

そしてアマゾンも「再販売価格維持契約」を締結しており、上記の通り合法な契約である以上、遵守しなければならないというのが日本出版者協議会(旧・流対協)の主張だ。

ポイントサービス

実際に行われているのは値引きではなくポイントによる還元なんだけど、出版物のポイント制度はどうなのか(事実上の値引きではないのか)、という点については、「出版物小売業における景品類の提供の制限に関する公正競争規約」(PDF)というものがある。

「出版物小売業公正取引協議会」なる業界団体の決めた自主ルールだが、この団体も規約も公正取引委員会認定されている。

要約すると

  • ポイントによる還元は2%までOK
  • 年2回・90日以内の期間限定なら、7%までOK

これを超えるポイントはダメ、というルールが書店に課せられている。消費者利益に反するルールだが、公取委のお墨付きがある、という再販制と同じ状況だ。*3

書店のポイントカード*4はいくつかあるけど、これに沿って運用されている。

Amazonの場合

アマゾンの主張は

公取委には話をしており、商品を買うときにポイントを利用する以外に、景品を選択することもできるようにした」お探しのページが見つかりませんでした「 Commodity E101926 」

であって、具体的に何を指すのかよく分からないんだけど、書籍以外の商品にもポイントが使えるから値引きじゃないよ、てことじゃないかと推測している。

でもそれを言ったら他の書店もDVD文房具を扱っていれば同じ理屈が通るので「出版物小売業における景品類の提供の制限に関する公正競争規約」は無実化するんじゃないかと思う。

ともあれ「公取委には話をしており」というのがポイントだ。自ら認定した公正競争規約に反する行為を認めてしまったようにも見える。

まとめ

公取委が出版物の再販制をやめたいと考えていながら廃止しないのが混乱の元だよねぇ。

公正取引委員会著作物再販適用除外についての考え方でございますが,これは平成 13 年に考え方を公表しているところでございまして,この適用除外は廃止するべきであると考えていることには変わりはございません。著作物再販協議会(第8回会合)議事録等の公表について

*1:さらに大学や図書館に対する外商販売でも値引きが行われるが、あれは「小売」ではない、でOKかな。

*2:補足エントリを書きました→ はてなグループの終了日を2020年1月31日(金)に決定しました - はてなグループ日記 - 機能変更、お知らせなど

*3:だが実はこの規約は再販制とは何ら関係がない。どちらかというと景表法を上書きするイメージ。

*4cf. no title