『ハイスコアガール』はSNKのゲームを「引用」していると主張してみる

ハイスコアガール』はSNKのゲームを「引用」していると主張してみる

0. 許諾を得ていないのに©マークを詐称したのは違法

お帰りください。→ 『ハイスコアガール』問題で浮き彫りになった、著作権の理解度の低さ - KAI-YOU.net

0. 模写しているので引用じゃない*1

後述する引用の要件にそのような項目はない。

その論法だと、歌詞や談話や講演を引用する際には音源や映像を掲載することが必要となり、京極夏彦氏の小説を引用する時は版面を貼り付けなければいけなくなる。また本作でゲーム画面のスクリーンショットを貼り付けていたらマンガとして成立しないので、必然性のある表現方法であるといえる。

さて、引用の要件とは。

1 既に公表されている著作物であること

2 「公正な慣行」に合致すること

3 報道,批評,研究などの引用の目的上「正当な範囲内」であること

4 引用部分とそれ以外の部分の「主従関係」が明確であること

5 カギ括弧などにより「引用部分」が明確になっていること

6 引用を行う「必然性」があること

7 「出所の明示」が必要(コピー以外はその慣行があるとき)著作権テキスト~初めて学ぶ人のために~平成23年度 §8. 著作物等の「例外的な無断利用」ができる場合 ⑧ ア、「引用」(第32条第1項))

1. 既に公表されている著作物であること

OK。SNKプレイモア自身が著作物性を主張している。

2. 「公正な慣行」に合致すること

定義が曖昧なため保留。

3. 報道,批評,研究などの引用の目的上「正当な範囲内」であること

ハイスコアガール』はフィクションであり、「報道,批評,研究」ではない。

しかし本項の主眼は「目的上「正当な範囲内」であること」。よってOK。

また、「など」にはフィクションも含まれると解釈できる。JASRAC文藝家協会は小説においても「引用」が成り立つとしている。*2

JASRACは,文藝家協会との間で小説における引用に関し,楽譜については2分の1以内,歌詞については1節以内と「引用」の場合の量的制限を設けていたことから,同様の考え方の適用を主張していた。今回の合意では,著作権法32条の「引用」は,その量だけで判断すべきではなく,全歌詞でも引用として判断される場合もありうることを確認している。日本雑誌協会 日本書籍出版協会50年史 第4章 知的財産権・出版者の権利 D―2 著作権管理団体との関係 *音楽作品の引用

4. 引用部分とそれ以外の部分の「主従関係」が明確であること

OK。いわゆる二次創作とはここが決定的に違う。

5. カギ括弧などにより「引用部分」が明確になっていること

枠線やゲーム機器で区切られずに本編キャラクターと並び描かれる場面があるが、マンガとしての文脈上明確なのでOK。

6. 引用を行う「必然性」があること

ハイスコアガール』の主題とストーリーからしSNK作品に言及するのは必然なのでOK。

7. 「出所の明示」が必要(コピー以外はその慣行があるとき)

巻末のリストによりOK。章やページ数の表示は不可能なので要求できない。歌詞の引用時も曲のタイトルを書けば充分とされている筈。

と、無理矢理主張してみたが、スクエニが上記の内容で争ったら、ひくな。

最も重要な原則は、著作権者の意思が尊重されることだと考える。それはそれでSNKSNKプレイモアの関係から微妙な感じになるのだが。

この状況は、読者も押切蓮介氏もSNKでゲーム作った人も、誰も幸せにならない。スクエニが仕事をせずSNKプレイモアが仕事をしただけなので、スクエニが今から仕事をしてちゃんと続きが読めるようにしてほしい。

あと、もしもフェアユース規定があれば、SNKプレイモアの利益を損なっているとは考えられないので認められるケースなのかなーと思う。

*1id:lastlineさんがサザエさん事件を引いて引用じゃないと主張しているのはよく意味が分からない。

*2:小説やマンガで歌詞を使うたびに「JASRAC出XXXX」などと表記するのは本来不要という議論をどこかで見た記憶があるのだが、探しても見つからない。